仕事の現場では、レジや売上の500円が合わないと、すぐに大問題になる。
誰が間違えたのか、どこで数字がずれたのかを確認する。500円の不足は、放っておかない。
一方で、始業前の20分や30分に準備や引き継ぎをしていても、「そのくらいは普通」と流れていた。自分も、その時間を毎日のこととして受け入れていた。
500円より大きい時間を、見ないままにしていた
始業前に仕事を始めると、その分だけ睡眠や移動、帰ってからの回復に使える時間が減る。短い時間でも毎日続けば、生活の側に食い込んでくる。
それなのに、500円の誤差には緊張する一方で、始業前の時間は数字にしていなかった。準備、引き継ぎ、接客のための待機。何をしていたかを記録せず、職場の空気に合わせて「普通」と呼んでいた。
ここで、すぐに「サービス残業だった」「必ず請求できる」と決めたいわけではない。その時間が労働時間に当たるか、未払いがあるかは、指示の有無や実際の働き方、契約などを見て個別に判断することになる。
時間を数字に置くための仮例
これは自分の実額や請求権を示す計算ではなく、記録した時間を数字に置くための仮例である。
始業前の20分が月20日あり、時給を1,300円と仮定する。20分を時間に直すと20÷60時間なので、月20日なら (20÷60)×20×1,300=約8,667円になる。
500円の差より大きいから問題だ、と単純に決めるための数字ではない。何分が何日続いたのかを置いてみると、感覚だけで「普通」と扱っていた時間の大きさが見えてくる。
まず数日、仕事を始めた時刻を残す
自分が同じ状況を確認するなら、最初から職場と対立する形にはしない。数日だけ、次のことをメモする。
- 予定されている始業時刻と、実際に業務を始めた時刻
- その時間にしていた準備、引き継ぎ、接客、待機などの内容
- 上司や同僚からの指示があったか、断りにくい空気だったか
- 勤怠記録、メモ、メールなど、後から確認できるもの
記録がたまったら、契約書や就業規則、勤怠の記録と照らし合わせる。自分だけで「これは違法だ」と結論を出すのではなく、疑問が残るなら、職場の正式な窓口や相談先へ持っていく。
厚労省の説明を、判断の出発点にする
厚生労働省は、使用者が労働者の始業・終業時刻を確認し、記録することを労働時間把握の原則として案内している。労働時間の適正な把握方法についてのQ&Aでは、タイムカードやICカード、パソコンの使用記録などの客観的な記録も挙げられている。
ガイドラインでは、労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間とされ、使用者の指示による業務上必要な準備や、すぐ業務に入ることを求められた待機なども例として示されている。ただし、その時間が実際に当たるかは、個別の状況を見て判断するものだ。労働時間の適正な把握のためのガイドラインを読んでも、自分のケースの結論まで自動的に出るわけではない。
職場の正式な窓口に相談しにくい時は、厚労省の総合労働相談コーナーもある。職場のトラブルについて、面談や電話で相談できる窓口で、利用は無料と案内されている。
「普通」の前に、記録を置く
500円の不足を確認できるなら、始業前の20分も、まず記録するところから始められる。記録したからといって、すぐ請求や対立に進む必要はない。
自分が見なかった時間を数字に置き、何をしていたかを残す。そのうえで、契約や勤怠と照らし合わせ、必要なら正式な相談先へ持っていく。
「普通」と呼ばれていた時間を、普通のまま終わらせない。最初にできるのは、500円と同じように、始業前の20分にも確認の手を伸ばすことだった。